職員室の裏側

教員歴12年になるひらしぃです。現役高校教員が色々な記録をしていきます

主体的で対話的で深い学びの実現のために① 〜詰め込み教育の真実と虚構〜

いわゆる”アクティブラーニング”とも呼ばれる、

文科省が掲げる「主体的で対話的で深い学び」。

 

 

主体的(子供達が能動的に)で対話的(協力しながら)で

深い学び(解決や想像につなげる力を養う)

と解釈できます。

 

 

アクティブラーニングには

以前から賛否両論がありました。

 

様々な意見がありますが、

その最も大きな論点は

 

学力の定着

 

についてであると感じます。

 

 

 

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社会的な準備不足と

教員達の理解が得られぬまま実施されたことにより、

現場に混乱を与えて

失敗の烙印を押されてしまったゆとり教育

 

急落してしまった子供達の基礎学力を取り戻そうと、

近年はゆとり教育以前より一層、

詰め込み教育の強化に力を入れられています。

 

「生徒達のアクティビティより学力の向上」

を重んじる層は教員にも保護者にも多数おり、

そのため子供達の教科書は以前よりも分厚く、

多くの宿題を課せられることが多くなりました。

 

かつては日本の子供が1位に君臨していた

PISA国際学力テストの数学的リテラシー

ゆとり教育が始まってから徐々にランクを落としていき、

2006年にはついに10位にまで落ち込んでしまいました。

 

もはや学校だけでは学力は身に付かない、

学習塾に通わせるのが当たり前で、

金銭の格差がそのまま教育の格差になっている、

とまで報道されてしまいました。

 

これに危機感を持った教育再生会議によって

「脱ゆとり」について言及され、

マスコミからの強い煽りを受け、

中教審は脱ゆとりの学習指導要領改訂を2008年に答申し

2011年から新しい学習指導要領が施行されました。

 

 

しかし、その一方で

2012年中教審では

「学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である」

という表現も用いるようになりました。

 

この頃から「アクティブラーニング」という用語が

教育界では盛んに議論されるようになってきました。

 

 

これが「主体的で対話的で深い学び」の

そもそもの起源であると言って良いでしょう。

 

 

さて、話を戻すと

アクティブラーニングでは

高い学力の定着は難しいとの論調が少なくありません。

 

ガンガン授業を進めて、

バリバリ課題をこなし、

ドンドン難易度の高い勉強をしたほうが

学力が上がるだろうと考えられることも多いです。

 

ただ、

ちょっと考えて欲しいのですが、

そもそも学校教育の目的は何か、

ということです。

 

学校教育は高い学力を身につけることが目的なのでしょうか?

 

 

確かに学力が高いと将来の選択肢は広がります。

 

 

しかし私は高い学力は

あくまで夢を叶えるための方法の一つであると思います。

 

 

学校教育の最も重要な目的は

子供達が社会で生きていく力を学ぶことにあります。

 

 

従来の詰め込み型、

親や教師からの指示に黙って従い、

周囲のために個性を殺し、

多少の理不尽にも目を瞑ることが果たして生きていく力の

構築になるのでしょうか?

 

確かにこれらは一昔前の

大量生産・大量消費の時代や

さらに前の軍国主義的な教育では

効果的であったかもしれません。

 

 

しかしこの令和の時代。

 

命令や慣習、空気を重んじる時代から

「個」やその人「らしさ」が重視される

社会へとパラダイムがシフトして来ています。

 

そしてAIがさらに進化して

人間の仕事が縮小すると言われている時代に、

指示待ちを良しとする

インプット偏重型教育では

生きていく力を身につけるのは

難しいと言わざるを得ません。

 

 

より主体的に、

より活動的に何事に対して取り組む姿勢が

これまでよりさらに重要になってきます。

 

そのためには、

従来の教員主導の授業形態ではなく、

生徒主導の活動的な授業形態が

これからの時代に必要であると言えるでしょう。

 

 

 

これまで長い間学校教育は

先生が 黒板の前に立ち、

黒板にたくさんの文字を書き、

一生懸命説明し、

多くの宿題や課題を課して

生徒達の学習能力向上に努めて来ました。

 

今の日本があるのも

過去の教員達がたくさんの子供達を

力の限り育てて来た賜物であることは、

言うまでもありません。

 

ただ、

時代が大きく変化している以上、

教育現場も変わっていかなくてはなりません。

 

詰め込み教育から生まれたエリートが

幸せな人生を歩むというストーリーは

もはやただの虚構です。

 

 

ただしもちろん全てを生徒主導に変えることは

できないですし、

私たちは「学習指導要領」によって

授業の内容や進行度が大きく制限されているのも事実です。

 

ですので、

少しずつ教員が説明する時間を減らし、

板書を写す時間を

生徒達が主体的に学ぶ時間へ、

授業スタイルをシフトさせていくことが

現実的に今の私たちが努めていかなくてはならないことと言えます。

 

主役はあくまで生徒。

主体的で対話的で深い学びの実現には、

私たち教員は授業の黒子に徹する姿勢が求められてきます。

 

 

 

今教育界は大きな転換点に来ています。

 

 

アンテナを高くして情報を収集し、

失敗を恐れずに新しいことにチャレンジしていくことが

今の私たちがするべき新しい時代への準備と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

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